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[片道勇者TRPG]サントリナの日誌 『二日目』1枚目

■二日目、サイーショの街。

 今、私たちは、廃墟とも言えるような場所でひとときの安らぎに身を委ねています。
 ……そう、私"たち"なんです。今は同行者がいるんです、喜ばしいことでしょう?

 細かいことを、覚えている範囲で、時系列を追って書き記したいと思います。


 野営地に赴いた私は、ギリアムさんという方に出会いました。
 彼はキャラバンの隊長で、何やら酷く焦っている様子でした。
 どうやら、テレサという女性、おそらくは彼の奥様が、夕方から薬草採りに出かけたきり、夜になっても戻ってこないという話でした。
 このあたりは確かに薬草が豊富でしたし、夢中になってしまうのもわかる気がしましたが、夜になっても戻ってこないというのは流石に心配です。

 そうして、そこで私は始めて妖精を目にしたのです。

 彼女の名前はアレイラ。
 ピンクの髪はツインテールで括ってあり、小さな細工のティアラを冠していました。どうやって作ってあるのか分からない小さなメガネも掛けており、きっと誰かに大事にされてきた子なんだろうな、と感じました。そうでなくては、このような細かい装飾品を用意できるわけがありませんから。
 なんて愛らしい子なんだろう、と思ったこの第一印象は、すぐに打ち消されることになるんですけれどね……。

 私は、人として、ギリアムさんとテレサさんのことを見捨てることが出来ませんでした。
 よって、アレイラことアレちゃんと協力してテレサさんを探しに行くことにしました。
 その際、借用書だのなんだのにとお金にこだわってすぐ動こうとしないアレちゃんを見ていますと、
「ああ、妖精って言っても人間と一緒なんだな……」
 と幻滅をしましたが……今となっては些細なことです。
 ともかく彼女を引っ張って、私は急ぐことにしました。


 あたりの平地を探しても、テレサさんらしき人は見つかりませんでした。
 草の根をかき分けても探しましたが、流石にアレちゃんではないのだから草の根にいるわけはなく……。

 そうして少し諦めの混じりかけてきた頃……、明け方が近くなってきた頃でしょうか?
 森に入って少しすると、二人分の人影が見えました。
 片方は猫人のようで、片方は……ええっと、これ書かなきゃダメかな……、その、第一印象、変質者でした。
 だって、パンツ……もといフンドシ一丁は変質者でしょう!?
「ヘンタイさんはお金をいっぱい持ってるなの!」
 彼を見たアレちゃんはそう言ってましたが、パンツ一丁の人がお金をたくさん持っているようには私には思えませんでした。
 むしろ着るものも買えないんじゃないの!? って、普通はそう思うだろう、というのは、私の狭すぎる常識なのでしょうか……?

 猫人はどうやら女性のようでした。初めて見る猫人は思った以上に魅力的でした。動物好きにはたまらないものなのです。彼女の肉球の柔らかさについて考えているうちに、アレちゃんがテレサさんを早く探さないと、と促してきました。
 私もそこではっとして、テレサさんらしき人を見なかったか彼女に訪ねました。
 ……男性の下着姿をまじまじ見つめるのは、私には酷なのです。分かってください。

 そうして猫人の獣人であるンクさんと、……変質者で何故かバケツを被っているフンドシ一丁の人間ハムイさんと同行することになりました。なって、しまいました。
 何やらハムイさんは森に急に現れたとかなんとか聞きましたが……、その事象も気になりましたがそれよりもテレサさんの人命救助が最優先事項でした。
 ンクさんは、テレサさんの向かった方向にあたりをつけたようでした。
 彼女の先導に従って、私たちは進むことになりました。


 朝になって少し経った頃でしょうか。
 一時歩いたところで、また人と遭遇することになります。
 今度は普通の人でした、至って普通の常識人でした。
 私は安心しました。
 ……本当なら、獣人や人間を見た時点でちょっと前の私なら少しびくびくおどおどとしていたかもしれませんが、フンドシ一丁のバケツ人間を見ては全てが吹き飛びました。
 世の中の人々の、個々の常識って、そうやって構築されていくんですね?
 人間の男性、彼の名前はロイスさん。ちょっとクールな印象です。
 人懐っこそうなキツネの獣人はヴァンローバーさん、ヴァンさんとお呼びすることにしました。
 この二人はンクさん同様会話が通じそうでしたので、大変安堵いたしました。

 どうやら、私たちの行き先と彼らの行き先は同じようでした。
 利害は一致し、私たちは共にそこへと向かうことになります。
 私たちの辿りついた行き先には、大きな……昔書物で見た古代の偉人の墓所のような遺跡がありました。
 ロイスさんとヴァンさんは、ここを目当てに来ていたそうです。
 そして、アレちゃんが、テレサさんのものと思しき足跡を発見しました。
 足跡のサイズは私とあまり変わらないことから、女性のものとみて間違いないでしょう。
 ということで、私たちは全員で遺跡の中に入ることにしました。


<少しインクの色が違う。後で書き足されたもののようだ。ただ、字が乱れている>
 私はこの時、気づくべきだったのです。
 古い遺跡、誘うような女性の足跡、集った六人。
 それが何を意味する符丁だったのか、ということに。
 今となっては、後悔しても遅いと分かっているけれど、悔やんでも悔やみきれません。

 愚かなことに、『彼』に出会うまで、私はこの意味を……分からずにいたのです……。



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